2010/09/06
連載小説「昭和に生きて」第1話第1回
連載小説「昭和に生きて」第1話「山の手・下町・たけくらべ」 第1回 私が抱え続ける血は四代をさかのぼり、お江戸で生をさらして来た。義理人惰と、しがらみを粋に仕上げ、旅立った御先祖さん。今頃、卒塔婆の陰から、ペロッと赤い舌なぞのぞかせて、「なにが平成の御時世だい、ちっとも平らじゃありゃすめえが」なんぞと、舌打ちしていなさろう。 「涙も笑いもすべて斜に、かるくいなしてこそお江戸の人気さ、それが正義であるならぱ、負ける喧嘩なんぞするんじゃねえ、うろたえるなよ」と一喝しそうな御先祖さんは、今も、お江戸の地べたにお眠りでござる。
そんな家の風を背負う商家が、山の手と下町にあって、これが、花柳界を背にした場であって見れば、私の育ちのお里は知れようと言うものだ。山の手風の、たけくらべ、下町風のたけくらべ、昭和初期のたけくらべは、変動の歴史にゆさぶられ、悲喜こもごもの様相をきざみ流れつづけた。もっとも、物資欠乏の時代をまたぐ、丈くらべは、竹にもなれず、笹くらべ程度 でもあったか。されど、身体にひそむ憧れは、吹きすぎる戦の嵐にあおられようとも、笹なりにザワザワと騒ぐ音を忍んでいた。
坂のあるふるさと訪で神楽祭り
メンコ・ベーゴマ・切れ切れの夢
(つづく)
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