2007/04/30
短歌集「十五歳の敗戦」その1
禁じられ来し 知識求めて さすらひし焼け跡の街 新宿紀伊国屋
きんじられきし ちしきもとめて さすらいし
やけあとのまち しんじゅくきのくにや
例年より熱かった夏、ショーロホフの「静かなドン」を買った。洋画上映館で二本立ての合間に流れるジャズのリズムに酔った。
新しき 紙とインクの 香に酔ひつ
立ち読み 夕焼け 焼け跡の街
あたらしき かみといんくの かによいつ
たちよみ ゆうやけ やけあとのまち
現在の新宿歌舞伎町は原っぱだった。映画館「地球座」がポツンと最初に建った。
八月の 敗戦の日 唯うつろ
燃え尽きし涙 見る間に干えゆく
はちがつの はいせんのひ ただうつろ
もえつきしなみだ みるまにひえゆく
学徒動員。紅(くれない)の鉢巻をかなぐり捨てた日、勤労動員されていた明電舎大崎工場の中庭に、若い生命が不安げに肩寄せあっていた。
戦火あびし 桜の老木 唯一本
けなげに息す 校庭の夕べ
せんかあびし さくらのろうぼく ただいっぽん
けなげにいきす こうていのゆうべ
桜の木の下。母校附属の幼稚園児のあどけないお遊戯が忘れられない。
つたの葉の からみてありし 赤レンガ
新宿西口 焼け跡の校舎よ
つたのはの からみてありし あかれんが
しんじゅくにしぐち やけあとのこうしゃよ
この校舎の中にも戦時中、学校工場があった。兵士が腰につけた長いサーベルの音は冷たく乾いていた。
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