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短歌集「命の旅」その1

短歌集「命の旅」その1

とまどえば 紙に向かうなり
 涙あらば インク滲ませ 一人ゐの詩


とまどえば かみにむかうなり
 なみだあらば インクにじませ ひとりいのうた

16歳の秋・・・


入り潮の 香もなく ネオンの波ばかり
 迷いカモメか ここは数寄屋橋


いりしおの かもなく ネオンのなみばかり
 まよいカモメか ここはすきやばし

チンチン電車(市電)にゆられ、築地から牛込見付(神楽坂下)まで津久戸小学校に通学した。早朝、数寄屋橋の上をカモメが飛んでいた



風立ちて いざ添え木せむと庭に立てば
 抜きかねてありし 母小草咲きぬ


かぜたちて いざそえぎせんと にわにたてば
 ぬきかねてありし ははこぐささきぬ

亡夫一周のおりに


松風を わけてぞすぐる 古希の関
 ぬくもり運ぶ 足跡の詩


まつかぜを わけてぞすぐる こきのせき
 ぬくもりはこぶ あしあとのうた


ここまで来た、これからも行く、ありがとうの旅路


つき離し 見まわすことを おぼえたり
 ふりみだし来し 髪ととのえて


つきはなし みまわすことを おぼえたり
 ふりみだしきし かみととのえて

一人息子、結婚す


かにかくに 不惑知命は 汗まみれ
 負ひ来し荷解き なさけの湯あみ


かにかくに ふわくちめいは あせまみれ
 おいきしにとき なさけのゆあみ


また一つ関の戸をあけた、生き方を整え歩みだす。


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詩「母の日」

詩集「いきいきて」

母の日

母の日とは、年に一度、花屋の店先で
赤と白のカーネーションが、隣に香る蘭の花に
誇らしげな流し目を送る日。

母の日とは、子を生まぬ妻が遠慮がちに
あたえられずに来た淋しい胸に
白いカーネーションをそっと飾る日。

母の日とは、子と別れた母親が、
今更どうにもならぬに、
今日、子供の胸に何色の花が飾られるのやらと
乳房の痛みを悔いつ託(かこ)つ日。

母の日とは、社会の裏に、ひそと流れた
女の赤い涙と白い涙が花を染め、
今日一日、男の人が、
自分を生んだのは、女だったことを思い知る日。


(昭和45年5月10日 商いの日々の中で)


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プロフィール

可久鼓桃

Author:可久鼓桃
東京・京橋生まれの神楽坂育ち。
江戸っ子3代目。
昭和4年生まれの88歳。
短歌、詩、小説、絵画など幅広く表現。
運命鑑定家でもある。

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