2018/05/13
可久鼓桃・詩「母の日」 再録
詩集 生き生きて・・・・・・・・・・・・・再録母の日
母の日とは、年に一度、花屋の店先で
赤と白のカーネーションが、隣に香る蘭の花に
誇らしげな流し目を送る日。
母の日とは、子を生まぬ妻が遠慮がちに
あたえられずに来た淋しい胸に
白いカーネーションをそっと飾る日。
母の日とは、子と別れた母親が、
今更どうにもならぬに、
今日、子供の胸に何色の花が飾られるのやらと
乳房の痛みを悔いつ託(かこ)つ日。
母の日とは、社会の裏に、ひそと流れた
女の赤い涙と白い涙が花を染め、
今日一日、男の人が、
自分を生んだのは、女だったことを思い知る日。
(昭和45年5月10日 商いの日々の中で)